歴史

航空機用塗料、自動車用防音材で90年。

強い紫外線や急激な温度変化、激しい風圧や空気摩擦といった厳しい環境から機体をまもるため、特殊な機能が要求される航空機用塗料。当社は、1929(昭和4)年にこの航空機用塗料の開発からスタートして90年の間、その技術を基盤に、さまざまな塗料=色を生み出してきました。

また、1953年に自動車用防音・防錆塗料「ニットク・アンダーシール」を開発して以来半世紀。当社は防音材=音の世界の研究に力を注ぎ、その製品は国内のすべての自動車メーカーに採用されるに至り、その生産の場を北米やアジアに広げています。

「色の世界と音の世界」──。塗料メーカーとして、未知の分野に挑戦し、社会に貢献する。これが、当社の社是「創意工夫」が目指すところです。当社が色と音の世界に取り組んできた軌跡は、その「創意工夫」の精神で貫かれています。

創業者・仲西他七

創業者・仲西他七

航空機用塗料のパイオニアとして──原点は「創意工夫」

航空機用塗料見本帳 「海軍航空機用塗料色別標準」

航空機用塗料見本帳
「海軍航空機用塗料色別標準」

当社は、1929(昭和4)年6月1日、長年航空機用塗料の研究を続けてきた仲西他七によって、日本特殊塗料合資会社として設立されました。最初の製品は航空機用塗料「T・T(テー・テー)金属用塗料」。この塗料は、当時まだ研究中だった航空機の機体の金属化を見据えて開発されたものです。軽量で、密着性、耐油性などの性能に優れた、ベンジルセルロース系金属用塗料の草分けとなった製品でした。

航空機の機体の金属化にともない、T・T金属用塗料は陸海軍に採用され、その後も次々と新製品を開発。当社の技術に対する信頼も確立されていきました。これを背景に、1936年、合資会社から現在の「日本特殊塗料株式会社」へ改組し、航空機用塗料の生産に力を入れました。

その後、1945年5月に福岡県久留米市に九州工場を設置した矢先の同年8月15日、第二次世界大戦が終結。航空機の製造も全面的に禁止されたため、当社は一時休業の状況にまで追い込まれました。1948年1月からは、奇跡的に戦災を免れた東京工場と九州工場を賃貸することで経営を存続させました。会社再建を目指して2つの工場を再び本社に統合したのが1950年1月。苦しい経営が続くなか、再建の目処が立ったのは、1951年に発売したセメント瓦用塗料「スレコート」と、1953年の自動車用防音・防錆塗料「ニットク・アンダーシール」が順調な売れ行きをみせてからでした。

“色のニットク”──ものを彩り、保護する塗料の開発

当社は、「スレコート」により、一般塗料のメーカー、すなわち“色のニットク”として再出発し、航空機用塗料で培った技術をもとに、建築市場向けのさまざまな塗料の開発を続けました。その技術は、1966(昭和41)年の屋根用塗膜防水材「プルーフロン」をはじめ、1973年の塗り床材・舗装材「ユータック」シリーズ、さらに、塗料における“技術のニットク”を印象づけた、1983年開発の超高弾性壁面防水化粧材「ハイプルーフ」など、防水材や塗り床材、内・外装材といった幅広い分野で実を結びました。これらの塗料は、建造物を美しく彩ると同時に、保護するという機能をもつ特殊な“色”でもありました。

塗料は、塗膜となることで初めて品質を発揮します。その品質の保持を目的に、1984年、全国各地の有力な施工業者・販売店で責任・施工システムの「全国ハイプルーフ連合会」を結成。1994(平成6)年には「ニットク・アメニティシステム連合会」に改称し、当社の全製品を扱うこととなりました。また、1995年には、当社の特約店組織である各地の「日特会」を総結集した「全国日特会」が発足。“色のニットク”の品質は、技術力だけではなく、これらの多くの会員の協力により支えられ、今日に至っています。

一方、ニットクの原点である航空機用塗料は、戦後、民間航空が再開されると同時に「スカイハロー」という名称で上市。現在、民間の航空会社に採用されているとともに、政府専用機や各航空会社の特別塗装機など、その機体をカラフルに鮮やかに彩っています。さらに、次世代超音速航空機「SST」用の塗料の研究開発に着手したことに加え、宇宙航空研究開発機構のH-II Aロケットにも採用され、国内だけではなく、世界の空、そして宇宙にはばたこうとしています。

ニットク・アメニティシステム連合会総会

ニットク・アメニティシステム連合会総会

“音のニットク”──自動車用防音塗料から各種防音材まで

東海道新幹線N700系「のぞみ」

東海道新幹線N700系「のぞみ」

「防音くん 吸音デコ」

「防音くん 吸音デコ」

塗装することで防音効果を発揮する画期的な防音塗料「ニットク・アンダーシール」。当社は、1953(昭和28)年に開発したこの製品により、防音材メーカーとしての第一歩を踏み出しました。自動車用防音塗料が国産化されていなかった当時、ニットク・アンダーシールは国内の各自動車メーカーに急速に認められ、鉄道車両にも採用されました。

それからおよそ10年後。高度経済成長期のまっただ中で、ニットク・アンダーシールの開発技術をもとに、まったく新しい防音材を生み出しました。それが、1964年に上市した自動車用制振材「メルシート」です。走行時の車体フロアの振動を抑え、騒音を減少させるメルシートは、製品として画期的なものであったと同時に、当社の業態を大きく変化させました。“色のニットク”とともに、防錆・防音材メーカー、すなわち“音のニットク”としても本格的に歩み始めることになったのです。

塗料メーカーという枠組を超え、未知の分野の技術開発に挑戦する──。その成果がニットク・アンダーシールとメルシートであり、この2つの製品で培われた防音技術は、以後、各種の自動車用吸・遮音材や建築・構築物用防音材「イーディケル」および「防音くん」シリーズ、家電・OA機器用防音材、さらには鉄道車両用防音材を生み出し、今日の“音のニットク”を支えています。

生産設備の増強と研究・開発体制の充実

“色と音のニットク”として再出発した当社は、1961(昭和36)年に東証第二部に上場。1991(平成3)年には念願の東証一部上場を果たしました。そしてその間、生産力の強化のため、工場の新設に努めました。

1960年の愛知工場をはじめ、1965年に平塚工場(東京工場移設)、1968年に広島工場、1969年には静岡工場と、相次いで工場を新設。1987年には、九州工場を久留米市から佐賀県みやき町に移転し、1991年、福岡県行橋市に東九州工場を建設。6工場体制で、塗料と自動車用防音材の生産能力を拡充しました。

優れた機能をもつ製品は、高度な技術力によって生まれます。1991年、研究・開発体制を確立するため、その拠点となる開発センターを建設。1998年には開発センター内に塗料技術棟を建設し、現在も色と音の分野で研鑽を積んでいます。

東九州工場の防音材生産ライン

東九州工場の防音材生産ライン

ワールドワイドな視点で──積極的な国際展開

自動車用吸音材「ダッシュインシュレーター」

自動車用吸音材「フードインシュレーター」

超軽量防音システム部品「リエタ・ウルトラライト」

超軽量防音システム部品「リエタ・ウルトラライト」

当社は、国内での生産・研究体制の拡充とともに、海外にも目を向け、積極的な国際展開をはかってきました。

いち早く取り組んだのは、防音材分野での基礎技術の確立です。1967(昭和42)年、防音材の先進的なメーカーであるスイスのマテック・ホールディング社(現オートニウム・ホールディング社、旧リエタ・オートモーティブ・システムズ社)と技術提携し、吸・遮音材「タカ」「タカポール」の生産を開始しました。その後、それらの技術をもとに、遮音材「ダッシュインシュレーター」、吸音材「フードインシュレーター」、吸・遮音材「ダッシュアウターインシュレーター」など、自動車のあらゆる部分の防音材の開発を続け、2001(平成13)年には、部品重量を従来比30~60%軽量化した革新的な超軽量防音システム部品「リエタ・ウルトラライト」の製品化に成功しました。

塗料についても海外企業との技術提携を推し進めてきました。1982年、アメリカのプロテクティブ・トリートメンツ社(現エフテック社)との自動車用耐チッピング塗料・塗材に関するクロスライセンス契約の締結を皮切りに、1984年にはアメリカのデフト社からの航空機用塗料の技術導入、1988年のスイスのエムス・トーゴー社(現エフテック社)との自動車用防錆塗料および保護塗料に関するクロスライセンス契約、さらに2007年にはアメリカのサネックス社(現サンスター・エンジニアリング・アメリカ社)との自動車用防錆材に関する技術供与契約の締結など、多彩な分野で“世界の中のニットク”の技術を培っています。

グローバリズムの流れとともに──海外の生産拠点の設立

1980年代に入り、日本の自動車メーカーが相次いで北米に進出し、現地生産が盛んになりました。当社は、その流れに対応し、現地の日系自動車メーカーに自動車用製品をスムーズに供給するため、1984(昭和59)年、アメリカ・シカゴ市近郊に最初の現地法人・Uni-NTF社を設立。1986年には、このUni-NTF社を母体に、グローブ・インダストリーズ社(現リエタ・オートモーティブ・ノースアメリカ社)との間で、合弁会社・UGN社を設立しました。

1990年代には、自動車市場が、タイをはじめアジアで活気を示し始めたことにともない、1994(平成6)年、タイのサミット・オート・シート・インダストリー社との合弁会社・SNCサウンドプルーフ社を設立。2003年には中国の広州に日特固(広州)防音配件有限公司を、2004年には天津に天津日特固防音配件有限公司を合弁で設立。さらに、2005年にはタイに2番目の合弁会社としてサミット・リエタ・ニットク・サウンドプルーフ社を設立し、中国およびアジアにおける生産拠点の拡充をはかっています。また、インドにおいても2008年、チェンナイにリエタ・ニットク・オートモーティブ・サウンドプルーフ・プロダクツ・インド社を設立し、2010年に操業を開始しました。また同年、中国内陸部に武漢日特固防音配件有限公司を設立、2012年にはインドネシアにタフィンド・ニットク・オートニウム社を設立し、日本の自動車メーカーのアジア展開に対応する体制を築いています。さらに2013年には、メキシコでの日系カーメーカーの積極的な現地生産に伴い、UGNメキシコ工場が11月より稼動を開始する予定です。

UGN社(米)・ソマセット工場

UGN社(米)・サマセット工場

日特固(広州)防音配件有限公司

日特固(広州)防音配件有限公司

環境への配慮──地球と未来を見つめながら

ISO14001を全工場で取得(写真は平塚工場)

ISO14001を全工場で取得
(写真は静岡工場)

環境に配慮した製品群

環境に配慮した製品群

現代は、企業の社会的責任と同時に、「国際的な品質」と「環境的な責任」が求められる時代です。当社は、その責任についての国際的な品質保証規格「ISO」の認証取得にも積極的に取り組んできました。

品質マネジメントシステムの国際規格「ISO9000」シリーズについては、1997(平成9)年の愛知工場を最初に、2001年までに全事業所が認証取得。また、環境マネジメントシステムに関する国際規格「ISO14001」も、2002年11月に6工場すべてにおいて取得を完了しました。とくに、平塚工場と静岡工場、東九州工場ではいち早くリサイクルラインを設置し、稼働しています。

このような国際規格に準じた態勢で、当社は、環境に配慮した、ホルムアルデヒドなどの有害物質を含まない塗料や、ゼロVOC塗料などの開発を進める一方で、屋根および外装用遮熱塗料「パラサーモ」シリーズ、光触媒塗料「エヌティオ」、多機能弾性外断熱システム塗料「NTダンネツコート」など、特別な機能をもった塗料の製品化に努めています。

また、自動車用防音材の分野では、燃費の大幅な向上を実現する超軽量防音システム部品「リエタ・ウルトラライト」やリサイクル部品を利用した製品などの開発をベースに、積極的に環境保全に貢献しています。

地球環境と共生しながら、よりよい色の世界と音の世界を切り拓く──。ニットクは、これからも「創意工夫」の精神で、21世紀にふさわしい「社会と環境に貢献する企業」を目指します。